私は趣味で小説を書いたりするのだが、途中まで書いたものの放置してしまった物語が幾つかある。
その続きをChatGPTさんに考えてもらうことは出来るだろうか。
やってみた。
私「次の物語の続きを考えてください。
最初に見えたのは灰色。その視界の端から光が差し込む。眩しい。無意識に顔を背け、その時になって初めて自分が床に寝ていることに気付いた。頭が痛い。顔をしかめながらゆっくり身を起こし辺りを見渡した。天井と同じ色の壁。コンクリートか。上を見上げる。先程自分の目を眩ませたもの、シンプルな傘の付いた電球がぶら下がっているだけだった。まるで牢獄。見覚えのない場所。ここはどこだろう? そんなことを考えた時、はたと気付く。自分の顔から血の気が引いて行くのがはっきりわかった。
「誰か、誰かいますか? ……ねえ、誰か!」
居ても立ってもいられずそう叫ぶ。誰も答えてはくれない。ここがどこなのか、そんな些細なことはもうどうでもよかった。
「ねえ、誰か居るんでしょ? 返事して! お願いします、教えてください!」
返事はなく叫び声はコンクリートに染み込むだけだった。そのあまりの虚しさに弱気になり、声がだんだん小さくなってしまう。
「ねえ! 教えて! 誰か、いないの! 私は……」
最後には自分にしか聞こえない程の小さな声で私はぽつりと呟いた。
「……私は誰なの?」
やはり返事はない。聞こえるのは自分の息遣いと鼓動だけ。不安に押し潰されそうになる。自分が誰かわからない。記憶喪失というやつなのか。落ち着けと自分に言い聞かせる。そしてふと思う。そもそも自分が何者かさえわからないのにそんな正体不明な者に言い聞かせている自分は滑稽だ。そんなことを考えると可笑しくなった。おかげで落ち着けた。皮肉なものだ。
もう一度部屋を調べて見ることにする。」
私はゆっくりと立ち上がり、壁に寄りかかった。頭痛が悪化してきた。何が起こったのか、どうしてここにいるのか。全く思い出せない。しかも、私はこの部屋に閉じ込められている。もしかして誘拐されたのか? そう思うと、怖くなってきた。
壁を探ると、角に何かがあった。触ってみると、そこは隠し扉だった。不思議な気持ちで開けると、階段が続いていた。先が見えない。でも、私は進むしかなかった。この部屋に閉じ込められている限り、何も変わらない。
階段を降りていくと、薄暗い地下室のような空間に出た。光が差し込んでいないため、私は懐中電灯を使うことにした。すると、先に人影が見えた。
「あなた、誰?」私は声をかけた。
すると、その人物は振り向いて私を見つめた。彼は年配の男性で、重厚なスーツを着ていた。その目つきは冷たく、何かを企んでいるような印象を受けた。
「あなたこそ、誰だ?」彼が問いかけてきた。
私は思わず口ごもった。「私は……私は自分が誰かわからないんです。この部屋で目が覚めたんです。」
彼は微笑んだ。「それはつまり、私が探していた人物ということですね。」
私は混乱した。「探していた人物? 何を言っているんですか?」
彼は私に向かって歩いてきた。「あなたは、とても重要な人物なんですよ。それに、あなたのことを探し回っていたんです。」
私は驚いた。「私が、重要な人物? どうして?」
彼は微笑んだ。「それは秘密です。ただ、今は私について来てください。あなたの行く先を案内しましょう。」
彼が先を歩き、私は後ろをついていくことにした。私は自分が誰なのかわからないまま、彼と共に未知の道を進んでいくことになった。
何が驚いたって、速い。速すぎる。
人間ならどんなに優れた小説家でもプロットを考えるという時間が掛かるはずだが、ChatGPTさんは迷うことなくどんどん文章を作っていく。
正直、AIが物語の続きを考える時もっと時間が掛かると思っていたのだが、そんなことはなかった。
恐怖すら感じる。
海外の小説コンテストでChatGPTで作ったとみられる物語が大量に送られてきてコンテストが中止になったというニュースを見たが、それも仕方ないなと思った。
ちなみに私が入力した物語、実際はもっと長い文章があり、続きはある程度書いてあったりする。
私の考えていた物語では、この後、主人公はしばらく、というか、物語の大部分、この部屋から出られない。
AIが考えた物語では案内役として年配の男性が登場するが、私の物語では不思議な言動をする青年が登場する。
彼らは移動することなくこの部屋で会話をするだけで物語が進んでいくという設定だ。
あと、AIが考えた物語ではちょっとおかしな点も見られる。
まず、懐中電灯はどこから現れた?
それに主人公は「この部屋で目が覚めたんです」と言っているが、主人公は階段を下りて地下室に来たのだから目を覚ました部屋と年配の男性と会った部屋は違うはずだ。「上の部屋で」とか「あっちの部屋で」と言うべきだろう。
まあ、細かい点で人間が見直して修正する必要はあるが、物語の続きのヒントをもらうという目的でお願いするのはありかもしれない。